【レポート】マラソンの突然死や体調異変を防ぐために――市民ランナーが知っておきたい横紋筋融解症の基礎知識と心臓負荷管理

先日開催されたニューヨークシティマラソンで、将来を有望視されていた学生アスリートの女性ランナーが24歳という若さで競技中に急逝するという痛ましい事故がありました。
一部の海外メディアでは「横紋筋融解症(rhabdomyolysis)」が直接の死因であるかのように報じており、ランニング界隈でも大きな波紋を呼びました。
しかし、その一方で、現場を知る救急医をはじめとする医療従事者からは「医学的に見てその可能性は低いと考えられ、本質的なリスクは別のところにあるのではないか」という慎重な見解が示されています。
どれだけ若く、鍛え上げられたアスリートであっても、フルマラソンという極限の運動負荷の中では予期せぬ身体の異変が起こり得ます。
今回はこの事例に関する救急医の解説投稿をもとに、「横紋筋融解症」への理解を深めるとともに、私たち市民ランナーが留意しておきたい心疾患リスクや安全管理について整理してみました。
参考・出典:本記事における医学的見解やデータは、以下「Outside Run」によるInstagram投稿(救急医 Jeffrey Sankoff氏の解説に基づくもの)を参照しています。 https://www.instagram.com/p/DfVX4HMieuX/
1.「横紋筋融解症」への理解と注意点
報道ではショッキングな病名として広まってしまった感のある「横紋筋融解症」ですが、長距離を走るランナーにとっても無関係とは言い切れない身体のトラブルの一つです。
センセーショナルな情報に過度に惑わされることなく、そのメカニズムと特徴を把握しておくことが重要です。
突然死の直接原因となる可能性は低いとされる理由
横紋筋融解症とは、激しい運動などによって筋細胞が損傷を受け、筋肉中の成分が血液中に溶け出してしまう病態の総称です。
解説によると、この症状が急激な心停止を引き起こす直接要因となるには、細胞から流出したカリウムが血中で急上昇するなどの極端な変化が必要とされます。
しかし、そこまでの筋破壊が起きている場合、激しい痛みや筋力低下によって走り続けること自体が極めて困難になるのが一般的です。
今回の事例では直前まで走行していたとの目撃証言もあり、横紋筋融解症が急逝の直接的な引き金となった可能性は考えにくいとの見方が出ている一因でもあります。
主な注意期間は「レース中」よりも「レース後」
マラソンなどで起こりうる運動性横紋筋融解症は、走っている最中よりもフィニッシュ後から数時間~数日後にかけてピークを迎える傾向があります。
溶け出したミオグロビンなどのタンパク質が腎臓に過度な負担をかけ、急性腎障害などを招く懸念があるためです。
レース後や翌日以降に以下のようなサインが見られた場合は、単なる筋肉痛と自己判断せず、早めに医療機関(内科や救急)へ相談することが望まれます。
●尋常ではない筋肉の激痛・異常な硬直
●足に力が入らないような強い脱力感
●赤褐色やコーラ色のような濃い尿(ミオグロビン尿)
●極度の倦怠感、吐き気、尿量の明らかな減少
2. 水分・塩分の適切な補給と「勇気ある撤退」
近年は、秋口や春先であっても予想外の高温に見舞われる大会が増えています。
高気温や脱水状態は、熱中症だけでなく運動性横紋筋融解症を重症化させる大きな要因になり得るとされています。
深部体温が過度に上昇し脱水が進むと、筋肉への血流が低下して筋細胞の損傷が促進され、腎臓への負担も増大しやすくなります。
●水分だけでなく、電解質(塩分)も意識してこまめに補給する
●喉の渇きを感じる前に、計画的に給水する
●特に初心者から初級者レベル(フルマラソン5時間台以降)のランナーはドリンクボトルを持参して補給するほうが安心
そして何よりも大切なのは、「自分の体調の変化を冷静に観察する姿勢」です。
どれほど練習を重ねて臨んだ大会であっても、強いふらつき、異常な身体の熱感、悪寒、頭痛などを自覚した際には、目標タイムや完走にこだわりすぎず、早い段階でリタイアを視野に入れる判断が命を守る防波堤となります。
ランニングやマラソンを趣味やレジャーとしてとらえている市民ランナーであれば、だれにでも当てはまることです。
3. 心疾患への注意と「ラストスパート」のリスク
同投稿で紹介された2025年の論文によると、ランナーの重大な急死事例の多くは心疾患(不整脈や心筋の異常など)に関連しており、その頻度はランナー10万人あたり約0.6件と報告されています。
さらに注目される点として、心疾患によるトラブルの多くがレースの最終盤(ラスト1/4)、特にフィニッシュラインに近づく局面で発生しやすいと指摘されています。
フォントサイズフォントサイズ
背景
ゴール直前の無理なペースアップを控える
「あと少しで制限時間・目標タイムに届く」「フィニッシュゲートが見えた」という高揚感から、疲弊した身体で急激なスパートをかけてしまいがちです。これは記録を狙うシリアスランナーだけでなく、関門閉鎖と戦う完走目標のランナーにもよく見られます。
しかし、40km近く酷使され極限状態にある心臓に突発的な高負荷を加えることは、潜在的な不整脈などの重大なイベントを誘発するリスクを高めると考えられています。
フィニッシュ直後に急激に立ち止まらない
ゴールを駆け抜けた直後にその場へ崩れ落ちるように静止するのも好ましくありません。足を急に止めると、脚の筋ポンプ作用が途絶えて心臓へ戻る血液量が一時的に減少し、血圧低下や脳貧血、不整脈を引き起こしやすくなるためです。ゴール後もゆっくりと歩き続け、呼吸と心拍を徐々に落ち着かせる意識が推奨されます。
まとめ:自分の心拍とコンディションを可視化して観察する習慣を
走力や年齢に関わらず、長距離を走るランナーにとって「自分の心臓や身体にどの程度の負荷がかかっているか」を客観的に把握しておくことは重要です。定期的な健康診断や心電図検査を受けることに加え、日頃の練習やレース本番でも心拍数の推移や心電図を測定できるウェアラブルデバイスを活用するなど、体調のわずかなサインを見逃さない体制を整えておきましょう。
実録:レース終了から30分後の心電図チェック
私自身、先月開催された「東京レガシーハーフマラソン」のフィニッシュ後、愛用しているHUAWEI WATCH GT Runner 2で心電図測定を行いました。

この時計は、負荷の高いロング走やレースの終了から約30分が経過すると、画面に「不整脈のテストを行う最適な時間の1つ」と表示。心電図測定を促すリマインド通知が届きます(上の写真)。
ゴール直後の興奮や疲労で気が緩みがちなタイミングで、こうした客観的な促しが入るのはとても安心感があります。

心電図の測定はとても簡単で、指を側面のセンサーに当てて30秒静止するだけです。
上の写真はその結果画面で、「洞調律(心房細動の兆候なし)」と平均心拍数が表示され、極限状態から身体が正常なリズムへ戻りつつあることを手元で客観的に確認できました。
同時に、フィニッシュから30分経っても心拍数が90近くを保っていたため、「まだ心臓が完全に安静状態へ戻っていない」と冷静に判断。無理に動かず、競技場のベンチでしっかり休憩を取りました。
その場で水分と軽食をゆっくり補給し、落ち着いてから帰路へ。帰宅後も入浴と十分な食事を心がけ、7時間以上の睡眠を確保したところ、翌日は大きな疲労を残すことなく通常の仕事に取り組むことができました。
過酷なレースを走り切った直後だからこそ、感覚だけに頼らず、こうしたデバイスの機能を通じて自分の身体と対話する習慣が、大人世代が長く安全に走り続けるための大きな助けになると実感しています。
毎日の体調管理からマラソン後の心電図チェックまで
HUAWEIの管理医療機器承認アプリ搭載スマートウォッチ
長距離を安全に走り続けるために。心電図(ECG)測定機能を備え、心拍の推移や身体のコンディションを可視化できるスマートウォッチをご紹介します。搭載されている心電図アプリケーションは、日本国内で管理医療機器(プログラム)としての承認を取得しています(承認番号:30600BZI00035000)。
※本機能による測定結果は医師の診断に代わるものではありません。心臓疾患の確定診断や治療目的での自己判断は行わず、体調に異変や違和感を感じた際は速やかに医療機関を受診してください。
HUAWEI WATCH GT Runner 2
ランナーに特化した軽量設計モデル。高精度なGPSトラッキングに加え、心電図測定や心拍モニタリング機能を搭載。レースに向けたAIトレーニングプランの作成から、トレーニング負荷や日々のコンディション管理まで幅広くサポートします。
HUAWEI WATCH GT 7 Pro
高耐久なチタンボディに高度なヘルスケア機能を搭載。心電図測定をはじめとする生体データの計測に対応し、ランニングフォームやパフォーマンスの分析から日常生活の健康チェックまで手元で追跡します。