堀江敏幸『雲水のあいだを走る』の舞台を訪ねて…名古屋ウィメンズマラソン2018旅ラン日記(6)
※2026年1月4日追記:今年4月、ぎふ清流ハーフマラソンの出走のため、ふたたび岐阜を訪れます。
最後に岐阜を訪れたのは、8年前。名古屋ウィメンズマラソンの翌日、多治見を訪ねました。その時の思い出をまとめた記事を再度公開します。
*******
名古屋の旅ラン日記は今年も、
大会翌日の旅の思い出で
締めくくります。![]()
![]()
![]()
連載テーマは↓です。
【1】EXPOブース&イベントのようす ★
【2】大会オフィシャルグッズ&フードエリアの紹介 ★
【3】大会でもらったもの・買ったもの ★
【4】スタート・フィニッシュエリアのようす ★
【5】旅とミステリーの世界へショートトリップ ★
~名古屋・伏見
【6】堀江敏幸『雲水のあいだを走る』の舞台を訪ねて ★
~岐阜・多治見
*******
フランス文学者で作家の
堀江敏幸さんは、
岐阜県多治見市出身です。
堀江さんの書き物から
感じられるのは、
ものへのいつくしみ、
悠久の時、中庸の妙。
古いもの、こわれたもの、
すたれゆくものへの
温かくて深いまなざし。
せわしない現代人なら
気が遠くなるような
永い物語の中に身を置き、
上にも下にも、
右にも左にも波立たない
凪のような筆致で
日常と文学の世界の間を
ゆっくり行き来しています。
*******
名古屋へ出発する1ヵ月前―
リニューアル前の
マルノウチリーディングスタイルで
堀江さんの新しい本が
平積みにされていました。
『坂を見あげて』。

雑誌などに連載された
40数編の散文が収められ、
うち3編は郷里の岐阜に
ちなんだものです。
所収の『雲水のあいだを走る』は、
作家の高校時代のお話。
舞台は臨済宗南禅寺派の古刹、
虎渓山 永保寺です。
(こけいざん えいほうじ)
鎌倉末期、時の高僧夢窓疎石が
多治見の深山に庵を構えたのち、
正和二年(1313)に創建。
宗派としての開祖は、
京都・南禅寺で修行を積んだ
仏徳禅師(元翁本元)とのことです。
夢窓疎石は、世界遺産である
京都の天龍寺、西芳寺(苔寺)の
庭園を作った人としても有名です。
永保寺には2つの国宝があります。
その夢窓国師が建てた観音堂と
足利尊氏が寄進した開山堂です。
また雲水さんの修行道場があり、
南禅寺の高僧として活躍した人を
多く輩出しているそうです。
堀江さんは山のふもとにある
高校に通っていて、
部活動のトレーニングのため
山の上のお寺まで走っていたとか。
…距離はけっこうあります。
![]()
*******
小石に足を取られないよう
注意を払いながら下っていくうち、
道は川面とおなじくらいの
高さになっていて、
いつのまにか水音を
背中に浴びながら
ひなびた山門をくぐっていた。
……
境内に配された観音堂、
開山堂、本堂の、
反り返った檜皮葺きの屋根、





臥龍池にかかる無際橋が
水面に描く弧のシルエット、


正和二年(1313)に植えられたという
樹齢七百年に近い大銀杏の偉容。

ーー『雲水のあいだを走る』より
*******
事前に市の観光協会に連絡して
観光ガイドボランティアさんに
永保寺の案内をお願いしました。
当日はお寺の近くで待ち合わせ。
約1時間、境内を回りながら
お寺の歴史をていねいに
教えていただきました。![]()
![]()
多治見、永保寺を選んだ理由を
ガイドさんに尋ねられたので、
「私は堀江さんのファンで、
この作品がきっかけです」
と答えて、本の一ページを
指し示したところ、![]()
ガイドさんはうれしそうに
多治見生まれの作家の美文に
目を通してくれました。![]()
そして、
高校生の堀江少年が走った道を
一緒に確かめました。
「たぶんこの砂利道を駆け抜けて…

この道を上っていったのでしょう。」

帰りのバスを待ちながら、
ボランティアガイドさんは
多治見の暮らしのことを
たくさん話してくれました。
「名古屋から一日旅するなら、
岐阜も三重も行きやすいですよ」
と、次の旅のヒントも
いろいろ教えてくれました。![]()
四方を緩やかな山が囲み、
穏やかな土岐川が流れる……

まちをゆっくり歩き、
暮らす人の生の声を聞いて、
作家の原風景に少しでも
近づけた気がしました。![]()
*******
多治見のおみやげに
「焼きもの」ははずせません。![]()
織部 本店 さん。

東京にもお店があり、
ときどきふらっと寄ります。
こちらの本店では、
地元の陶芸作家さんの作品が
整然と並べられていました。![]()
市価の2割引きとのこと。
ラッキー。![]()
![]()
深みのある“オリベ・グリーン”の
毎日使えるうつわがないかな、
と探し回っていたら…
ありました。![]()
![]()
お皿の作者は菅野一美さん。
愛知県瀬戸市生まれ、
多治見在住の作家さんです。
見つかってよかった~。![]()
![]()

名古屋ウィメンズのおみやげに
買ったうつわが増えました。![]()
![]()
第1回大会はノリタケのケーキ皿。
昨年の第6回は
今は作られていない幻の瀬戸焼。
そして今年の第7回は美濃焼。
今日もわが家で大活躍です。![]()
![]()
******
永保寺を参詣する前、
多治見の駅前のレストランで
ランチをいただきました。![]()
![]()


本店は東京・代々木にあります。
入口では、お店オリジナルの
カップやお皿を販売。

岐阜・土岐市にある
手がけたものです。
手に取ってみたら…
……軽い。![]()
見た感じが長崎・波佐見焼の
モダンで重みのあるうつわに
似ているので、
この軽さは意外でした。![]()
ちびっこもお年寄りも
安心して使えそうです。![]()
色合いもやさしく、
和食にも洋食にも合います。![]()
木の大きなパネルと
プロジェクト・マッピングで
四季の移ろいを演出。

ランチに選んだのは、
瑞浪(みずなみ)ボーノポークカレー。

ご当地ポークを使った、
地産地消のメニューです。![]()
![]()
![]()
お肉が大きくてやわらか~。![]()

※今月リニューアルオープンしたため
ランチメニューは一部変わっています。
*******
名古屋に戻った後、
そのままいつものバーへ。
その日に見た多治見の風景を
思い浮かべながら、
『雲水のあいだを走る』を
もう一度読みました。![]()
愛知県産のいちごのカクテルと
一緒に。

人は身近な美に気づかない。
あるいは、気づこうとしない。
地元の高校生がそんなところに
立ち止まったりしたら、
夢窓ならぬ夢想家だと
揶揄されるに決まっている。
でも…
身近な美に敏感な堀江少年なら、
ここには立ち止まったと思う。

修行道場の前に掲げられている、
雲水さんへの“課題”。
この日は「碧巌録提唱」でした。

※仏教書の「碧巌録」を唱えなさい、の意味?
木板に書かれた墨跡に歩み寄り、
「これは何だろう?」と佇む少年。
竹箒で白砂をならす雲水さんが
その体育着姿の若い訪問者に気付き、
その手を止めて
静かに見つめていたかもしれない。

止まるなよ、と遠くで部員に促され、
踵を返して走り去る少年の背中を、
秘かに見守る誰かがいたかもしれない。


そんなセピア色のワンシーンが
頭の中に浮かんできました。
と、ゆっくり読み進めていたら、
帰りの新幹線の時間が
すでに近づいていました。![]()
![]()
いつものホワイトレディで
旅を締めたかったのに、
時間切れ。![]()
![]()
やさしいバーテンダーさんに
「また来ます」とあいさつして、
全力疾走で駅に向かいました。![]()
![]()
出発まであと3分。
ひと汗かいてしまった…。![]()
![]()

旅の最後の最後に猛ダッシュ。![]()
![]()
次はゆとりをもって帰路に着こう。![]()
![]()
*******
長文・駄文を最後まで
お読みいただき、
ありがとうございました。
次の旅ランは、5月。
新緑のまぶしい仙台です。![]()
![]()
![]()


